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荒れ野をゆくときも

2019年03月01日

山本 量太郎 (カトリック成城教会 主任司祭)

「荒れ野をゆくときも、あらし吹くときも」と有名な讃美歌の一節にあります(「カトリック聖歌集」660番2節)。わたしは、荒れ野を旅したいと思ったこともありませんし、ましてや、「あらしよ、吹け」などと願ったことは一度もありません。でも、長い人生の旅路にあっては、いやおうなしに荒れ野を歩かなければならない時がやってきますし、あらしの中を前進しなければならないような時も必ず訪れるのです。だから、その讃美歌の歌詞の続きは、「行く手を示して、絶えず導きませ」となっているのではないでしょうか。

人はだれも荒れ野を好きにならなくてもいいし、あらしに立ち向かう勇気を持ち合わせる必要もありません。ただ、そうなってしまったとき、「行く手を示して絶えず導いてください」と願う心だけは持っていたいと思います。

荒れ野で誘惑を受けられたイエスに天使たちを送って仕えさせた神は、わたしたちが荒れ野のど真ん中に置いてきぼりにされてしまったとき、あるいは、あらしが吹きすさぶ中で立ちすくみ、何も見えなくなってしまったとき、必ず天使を送って守らせてくださるにちがいありません。「神の守り、なが身を離れざれ」という讃美歌「神ともにいまして」の結びは、その確信が裏切られることはないと約束してくれているかのようです。

「わたしたちを誘惑に陥らせず、悪からお救いください」という主の祈りの結びの願いが、真に人間の弱さを知った人の祈りではないかと思うようになりました。キリストは、誘惑や悪と戦う力をわたしたちに与えてくださるように神に願いなさいとは教えなかったのです。人の世には、どんなに力を与えられたとしても打ち勝つことができないような、とてつもない悪があるからではないでしょうか。そのような巨悪を知らないで生涯をおくることができれば幸せです。できれば、そのような悪と出会うことがないようにと願ったとしても、けっして弱虫や意気地なしではありません。自分の弱さを知れば知るほど、人間は謙虚になっていき、「わたしたちを誘惑に陥らせず、悪からお救いください」とひたすら願うようになるのではないでしょうか。

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