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与える心-クリスマス

2008年12月01日

国井 健宏 (御受難修道会司祭)

1950年の寒い冬の夜、ネオンに彩られたニューヨークの街角を、イタリア生まれの音楽家が歩いていました。デパートのショーウインドウに飾られたクリスマスの馬小屋の前で彼の足が止まりました。飼い葉桶に寝かされたイエス様、見守るマリア様とヨゼフ様、周りを取り巻く羊飼いたち、そして宝物を携えた三人の王様……。懐かしい光景を見つめるうちに音楽家の心の中に、小さい頃のイタリアでのクリスマスの思い出のかずかずが描き出され、それが見る見るうちに一つの物語になっていったのです。音楽家の名前はジャン・カルロ・モネッティ、生まれた作品がオペラ「アマールと夜の来客」です。テレビで初めて放映されるオペラになりました。

アマールという貧しい羊飼いの少年が母親と二人で暮らしていました。この子は足が悪く、杖がないと歩くことができません。日が暮れて真っ暗になった夜空を見ながら、アマールは笛を吹きつづけ、家に帰りません。笛の音に混じって「アマール!」と呼びかける母親の呼び声でこのオペラは始まります。アマールは、尾のついた大きな星が動いていくのに見とれていて、母親の呼び声にも気がつかないほどでした。

この貧しい親子が小さないろりのそばで眠りについた頃、東の方から三人の王様が砂漠を越えて旅をしてきます。アマールの家の小さな明かりを見つけ、一夜の宿を乞うことになりました。「ご覧の通り何もない貧しい家ですが、夜風は防ぐことができます。どうぞ」と招かれて従者と三人の王様が一間の小さな家に入りました。従者の持ってくるかずかずの宝物に母親は仰天します。それがまだ見たこともない、生まれたばかりの新しい王様のため、と聞いて母親の心は動きます。「あれほどの宝物!一握りの金(きん)があれば、貧しいうちの子が、一冬を暖かく暮らすことができることを、この方たちはご存じかしら」と。皆が寝静まった後も母親は眠ることができません。「子どものため、子どものため」とひたすら念じて、宝物ににじり寄り、そっと手を伸ばしました。

「泥棒、泥棒!」という叫びと共に、従者に手をつかまれてしまいます。目を覚ましたアマールがこの姿を見て、「こら、母さんの手を離せ」と従者に杖で打ってかかり、王様に「母さんを行かせて、悪いのは母さんじゃないよ、僕がいつも悪いんだよ」と泣きながら訴えます。「手を離してやりなさい」という王様のことばで自由になった母親は、アマールを抱きしめて泣き崩れます。 

「その金は取っておきなさい。あなたにさし上げよう。わたしたちが探している王様は、そのような宝物を求める方ではない。愛によって治めてくださる方じゃ…… さあ、もう夜が明ける。出かけることにしよう」と立ち上がった王様たちに母親が言います。「お待ちください。わたくしもそのような王様をずっと待ち望んでいました。この宝物はお返しいたします。こんなに貧しくなければ、わたくしも何かお贈り物をしたいのですが」と宝物を差し出します。するとアマールが「ねえ母さん、僕の杖をあげようよ。ひょっとするとその子だって杖がいるかも知れないよ」と言って杖を持ち上げます。「いえ、いけません、いけません!」と叫ぶ母の声を無視して、アマールは杖を奉げたまま、王様のほうに歩き始めました。「歩いている、歩いている」と王様たちと母親が驚きにわれを忘れます。杖をあげようと決心したアマールの足が癒されたのです。「新しい王様からのプレゼントじゃ!」と皆で大喜びしますが、アマールが言います。「母さん、僕も新しい王様のところに行っていいでしょう?「お礼を言いに行きたいの」。こうして夜明け前、アマールは王様の一行とともに、杖を持って歩き始めました。西の空には長い尾のついた大きな星が一行を導き、アマールの笛の音と共に輝いていました。

この美しいオペラはクリスマスの心を見事に捉えていると思いませんか?クリスマスには勿論、たくさんの深い意味があると思いますが、何といっても「神様は、ひとり子を与えるほどわたしたちを愛してくださった」という、「与える心」ではないでしょうか。愛する人に一番いいものをあげたいと思うのは、わたしたちが神様の似姿に創られた証拠です。クリスマスの心、それは「与える心」です。家族や友人にプレゼントする前に、まず神様に何かお捧げしたい、と思うとき、ちょっと困りますね。マフラーや手袋は神様は必要ないでしょうし、商品券なども神様にとっては紙くずです。では、とお祈りをしても、お願いばかりになったりして。そんな時には、病気の人のお見舞いに行ったり、困っている人を助けてあげたりすることが、神様がご自分にしてもらったこととして受け止めてくださることを心に刻みましょう。「神は愛である」と宣言した使徒ヨハネが言われました。「目に見える兄弟を愛さないでいて、目に見えない神様を愛することはできません」。

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