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旧約の十戒と新約の愛の掟

2020年02月29日

山本量太郎 (カトリック成城教会主任司祭)

「神の十戒」の第一の掟は、現行の「カトリック教会のカテキズム」には、「私はあなたの主なる神である。私のほかに神があってはならない」とあります。

これを旧約聖書にある元の形と比較してみると、その違いに気づきます。出エジプト記20章2節にはこうあるのです。「私は主、あなたの神、あなたをエジプトの地、奴隷の家から導き出した者である。あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」

聖書は、神が旧約の民をエジプトの奴隷状態から救い出されたとまず記しますが、「カトリック教会のカテキズム」には、それに当たる部分がありません。言うまでもなく、十戒を理解するためには、聖書の元の形を踏まえる必要があります。

そもそも神は、人々が掟を守ったご褒美として、偉大な業をなさったわけではありません。旧約の民は、掟が与えられる前、既にエジプト脱出という神の偉大な救いの業を経験していました。神がそこまでしてくださったのだから、私たちも神に対して喜んで掟を守ろうではないかという心が彼らの根本にありました。神が先に愛してくださったことに対する感謝の行動が掟を守ることだったのです。

それがいつの間にか、掟を守ることが救いの条件のようになり、掟を守れない人は救われない、などと言って、他人を裁くようになりました。イエス・キリストはたびたび、そのような姿勢を非常に厳しく叱責しています。

イエスご自身が弟子たちに残されたたった一つの掟がヨハネの福音書13章34節にあります。「私があなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい」という愛の掟ですが、ここにも先行するキリストの愛が、まずあります。

愛し合ったご褒美として、神の愛が与えられるのではなく、キリストがそこまで愛してくださったのだから、私たちも互いに愛し合おうではないか、ということなのです。

私自身、二十歳くらいの頃だったと思いますが、聖書を通してこのことに初めて気づいた時、とても感動したことを、今でも鮮明に覚えています。

そして、子供の頃から、キリスト教という足かせを何とかして外したいと思い続けていたのが、それ以降は、逆にキリスト教を積極的に求めるようになり、今日に至っているような気がします。

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