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ある葬儀ミサの説教より ― 死者の月に寄せて ―

2018年11月01日

山本 量太郎 (カトリック成城教会 主任司祭)

わたしたちは毎日、道を歩いています。その道とは単に道路のことを指すのではありません。一回限りの人生という道を毎日歩いているのです。その人生という道の途上には、実にいろいろなことが起こります。その中でも大きな節目となることの一つとして「引っ越し」があると、わたしは確信するに至りました。

人生にとって引っ越しはつきものです。いや、「人生とは引っ越しである」と言い切ってもいいでしょう。生まれた家で育ち、生涯を送り、看取られていくような人生を送るような人にとっても、「人生とは引っ越し」なのです。人は皆、一人の例外もなく、地上の道のりを歩み終えたとき、最後の引っ越しをすることになるからです。

人生という道は、地上の道のりの尽きるところですべてが終わっているわけではありません。天上に神さまが用意してくださっている永遠の住みかまで続いている道なのです。わたしたちは地上の道のりを歩み終えたとき、天上の永遠の住みかへと「最後の引っ越し」をすることになるのです。

そして、最後の引っ越しのとき、わたしたちはすべてを置いて旅立たなければならないとしか思えないかもしれません。でも、最後の引っ越しも引っ越しですから、持っていけるものがあるのです。

教会には昔からこのような言葉が言い伝えられています。「人は神のもとに旅立つとき、自分のために集めたものは置いていかなければならない。しかし、人のために差し出したものを持っていくことができる」。人のために差し出したもの、それは単に「物」ではありません。人のために割いた時間、人のために砕いた心、人のために費やした労力、それらすべてを神さまのもとに持っていくことができるのです。それを聖書の言葉でいうならば、「愛は永遠」ということにほかなりません。故人が長年にわたる家庭生活の中で家族のためにどれほどの時間を割き、どれほど心を砕いたか、また、どれほどの労力を費やしたか、推測するだけで、故人がたくさんのものをもって神さまのもとに旅立たれたと申し上げることができると思います。

一方、人は皆、いろいろなものをわたしたちのために置いて旅立ちます。その中で一番大切にしなければならないものは何でしょうか。それは、財産でも業績でもなく、故人がわたしたちの心の中に残してくれた「思い出」です。カトリック教会ではお葬式で故人をお見送りするとき、「ミサ」をささげます。ミサとは何でしょうか。ミサは非常に豊かなものなので、いろいろな説明ができますが、「キリストの記念」、すなわち「キリストの思い出」ということもできます。教会は実に2千年の間、キリストの思い出を一瞬たりとも忘れたことはありません。その決して忘れることのないキリストの思い出にあやかって、わたしたちも故人の思い出をいつまでも忘れることなく大切にしていくことができますようにミサの中で祈りたいと思います。

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