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地の塩の箱

2017年02月01日

山本 量太郎 (カトリック成城教会 主任司祭)

 「地の塩」という言葉を初めて知ったのは、中学1年生の時でした。御茶の水駅近くにある私立の中学校に入り、毎日の通学を始めていた私は、ある日、駅の構内にそっと置かれている「地の塩の箱」と書かれた箱に気づいたのでした。近づいてみると、「困っている人はお使いください」というようなことが書いてあり、脇に開けられている穴から箱の中を覗くと、硬貨が何枚も入っているではありませんか。その箱の上に乗せてあった趣意書のようなプリントを1 枚取り、帰りの電車の中で早速読んでみました。そして、お恥ずかしい話ですが、その時初めて知ったのです。地の塩とは、聖書にあるイエス・キリストご自身のお言葉だということを。

 私は赤ちゃんの時に洗礼を受け、日曜日には家族そろって教会に行き、土曜日には教会学校にも通っていました。でも、ミサはラテン語でしたからその日読まれる聖書の箇所などには関心が向くはずもなく、教会学校もその大部分が公教要理的内容や紙芝居的聖書物語でしたので、「地の塩」という言葉は少なくともまったく記憶には残っていませんでした。

 その地の塩の箱にお金を入れている人がいる! それは、ただただ驚きでした。募金箱ならしかるべき届け先がありますが、この箱の場合、だれが持っていくか分からないのです。キリストの言葉に従って「地の塩」になるということは大変なことだ、そう思いました。

 私はきちんと確かめることもせずに、聖書には「地の塩になりなさい」と書かれていると思い込み、そして、大人になるまで、そんな生き方は重すぎる、窮屈だ、私にはできない、と心密かに思っていました。そんな時、たびたび御茶の水駅の「地の塩の箱」のことが目に浮かんだことでした。

 やがて第2 バチカン公会議が開かれ、教会でも聖書研究会が活発になっていく中で、私はある日、聖書には「塩になりなさい」なんて書いてないことに気づきました。キリストは実に「あなたがたは塩である」とおっしゃっているのです。そうだとすると、こんな私にも「塩である」と声をかけてくださっているのかもしれない、そう思いました。

 聖書の先生から教わったわけでもないし、そんな解説が書かれている本もありませんから、独りよがりだったかもしれません。でも、私はこう考えるようになったのです。人間は塩なしには生きていけないけれど、日常生活で塩はほとんど意識されない、それと同じこと、周りの人からそう思われなくても、人間は例外なく塩のようにかけがえのない存在なのだ、と。そしてそれ以来、キリストの言葉は私を窮屈にしないで、逆にのびのびとさせてくれるようになりました。そして私は今も信じているのです。全宇宙をおつくりになった神は、このちっぽけな人間のことを、このつまらない私のことを、塩のようにかけがえのない存在として愛してくださっているに違いない、と。

 なお、私は「地の塩」と対になったキリストの言葉「世の光」も同じように受け取っています。

〔追記〕 調べてみますと、「地の塩の箱」運動は、あるプロテスタントの信者の人によって1950 年代中頃に始まり、最盛期にはなんと700 以上の箱が東京近辺のあちこちの駅などにおかれていたそうですが、現在は1つか2つしか残っていないようです。

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