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2月のメッセージ

月報 第638号

「愛の賛歌・小考」

山本 量太郎 (カトリック成城教会 主任司祭)

結婚式の時に、新郎新婦、二人の証人、そして司式司祭が結婚証書に署名している間、オルガンの奏楽とか、聖歌の独唱などがあります。もう昔のことですが、わたしが当時いた教会では、その場面では「愛の賛歌」を歌うことになっていました。あるカップルにその旨お伝えしたら、「教会でも愛の賛歌を歌うのですか」と、逆に問い返されてしまいました。聞いてみれば、彼らが思っていたのは、「あなたの燃える手で…」で始まる、まったく別の歌でした。

愛の賛歌という曲はきっとたくさんあるのでしょう。でも、歴史上最も有名な愛の賛歌は、パウロの愛の賛歌であることは間違いありません。なにしろ、2千年近く、絶えることなく受け継がれて今日に至っているのですから。

パウロの愛の賛歌は、新約聖書に載っています。彼がギリシアのコリントの教会の信者たちへ送った手紙の一部なのです(一コリント13章)。パウロは言うまでもなく、キリスト教が全世界に広まるにあたって第一の貢献をされた偉大な人物です。屈指の理論家であり、大秀才でもありました。事実、彼の文集には難解な個所も少なくありません。そのパウロが愛を語る段になると、難しい言葉を一つも使わず、分かりやすく、しかも詩のような文体で人の心に響く文章を書いたのです。

「愛は忍耐強い。愛は情け深い。妬まない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、怒らず、悪をたくらまない。不正を喜ばず、真理を共に喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える」と、15の愛の定義を列挙した上で、「愛は決して滅びません」と結んでいます。

愛の定義といっても、AはBである、というような定義ではありません。愛があたかも生きている人間であるかのように語られるのです。愛とは定義するものではなく、生きて初めて意味のあるものだと言わんばかりです。わたしはある頃から思うようになりました。パウロが「愛は…」と語るとき、彼の心の中には一人の人物が前提になっていたのではなかろうか、と。

それは言うまでもなく、イエス・キリストです。そう思って愛の賛歌を読み直してみればみるほど、その確信が深まっていきます。パウロほどの人物であっても、愛を自分に置き換えて、「わたしは情け深い…」などと書くことはできません。愛の賛歌の「愛」を置き換えることができる人物はイエス・キリストしかおられないのです。「キリストは忍耐強い…」。愛の賛歌は、キリスト賛歌でもあるのです。


月報2月号
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